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あおい堂鍼灸院の
東洋医学的な円形脱毛症考察
円形脱毛症の分類
(この頁に記載されている内容は鍼灸師・理容師としての見解であることを了解の上読み進めてください)
円形脱毛症の症状を多数観察していきますと
ある一定のパターンのようなものが見受けられる場合があります。
それを東洋医学的また西洋医学的な考え方から、あおい堂鍼灸院独自の考察を行います。
☆円形脱毛症の発生部位☆
多くの円形脱毛症を見ていくと様々な脱毛の様相がありますが、
見ていくと初発部位(最初に抜けた場所)により
大まかに分類をすることができます。
それらを当ホームページでは東洋医学的な見地から独自の名前をつけて区別していきます
(学会などで認められている公式な名称ではありません)。
分類は主に初発部位及び続発部位、罹患者の東洋医学的身体特徴を関連付けて判断しています。
①太陽経脱毛(たいようけいだつもう)
これは経絡(気の流れ道)の中の太陽膀胱経(たいようぼうこうけい)に沿って
脱毛部が発症するものです。
西洋医学的な解釈では大後頭神経付近に発症します。
発生当初は後頭部の正中線(中心線)よりやや左右の両脇に発症する場合が多くあります。
単発(脱毛部が一箇所)から多発(脱毛部が複数)になる場合、
前後左右対称に発症していくような特徴があります。
東洋医学的に太陽経脱毛の方を見ますと脾胃と腎の弱りが見受けられることが多いです。
すぐに回復する場合も多いですが、
重症化すると太陽経脱毛から少陽経脱毛(後述)へと移行することがあります。
当院での鍼灸治療としては脾・胃・腎の健全化を中心とし、
大後頭神経走行部に対しての治療になるケースが多いです。
②少陽経脱毛(しょうようけいだつもう)
これは経絡の中で少陽胆経(しょうようたんけい)に沿った部位に発症するものです。
西洋医学的な解釈では小後頭神経及び耳介側頭神経に沿った部位に発症します。
発生当初は左右側頭部、特に耳周辺の髪際部やコメカミ付近に発症する特徴があります。
東洋医学的に少陽経脱毛の方を見ますと肝・脾・胃の弱り、
及び血虚(けっきょ)と呼ばれる血の働きの少ない方が多いのが特徴です。
すぐに回復する場合も多いですが、
重症化するといわゆる蛇行型脱毛へと移行することがあります。
今までのケースを見ていると病院では単発であっても蛇行型脱毛、
またはその可能性が高いと診断される方が多くいるようです。
当院での鍼灸治療は心・肝・胆・脾・胃に関わる治療と
耳介側頭神経・小後頭神経走行部に対する治療になるケースが多いです。
③陽明経脱毛(ようめいけいだつもう)
これは経絡の中で陽明胃経(ようめいいけい)と
陽明大腸経(ようめいだいちょうけい)に沿った部位に発症するものです。
西洋医学的には眼窩上神経、滑車上神経の走行部位付近に発症します。
発生当初は主に前頭部に集中して発症します。
東洋医学的には脾胃の働きが弱りが見受けられることが多いです。
すぐに回復する場合も多いですが、
重症化すると全頭に及ぶ汎発的な脱毛部を形成する場合があります。
当院での治療は主に脾胃の働きを健全化することを中心に行います。
④厥陰経脱毛(けっちんけいだつもう)
これは経絡の中では厥陰肝経(けっちんかんけい)の
流注(ルチュウ:気の流れ道で体表以外も含むもの)上、
最終地点である頭頂部付近に発症するものです。
東洋医学的には上実下虚といい、
本来全身に満遍なく巡っているはずの気が頭部に集中してしまった状況が多見受けられます。
単独で発症する場合もありますが、
多くは上記①②③の脱毛の途中で発症し、最後に治る場合もあります。
当院での治療は上実下虚を正し、
補肝(東洋医学上の肝の働きを高める)、
疎肝(東洋医学上の肝の働きを鎮める)、
補血(東洋医学上の血の働きを高める)を中心に行います。
⑤風府脱毛(ふうふだつもう)
これは経絡の中では督脈(とくみゃく)上のツボである風府付近に発生するものです。
東洋医学的には風(ふう)と呼ばれる邪気が影響しているものと考えられます。
ツボの名前である風府とは風が府(集まるの意)です。
単独で発生する場合もありますが①②③の脱毛の途中で発症し、
比較的最後に治る場合も多いようです。
当院での治療は去風(風を去らせる)、
理気(気を巡らす)、
補腎(東洋医学上の腎の働きを補う)を中心に行います。
円形脱毛症の原因探究
この章では筆者が今まで見聞きしてきた円形脱毛症の様々な情報を提示してそれぞれについて考察します。
(1)円形脱毛症が発症した原因について
筆者の鍼灸院へ治療に来られた方々に円形脱毛症発症の原因と考えられるものは何かを尋ねています。
その中で複数人から同じ回答があったものの中で印象的な幾つかを紹介いたします。
原因(1)ストレス
圧倒的に多くの方々がストレスを原因に挙げられます。
対人関係、仕事関係を中心にお話しされる方が多いですが、
世間には円形脱毛症の原因はストレスであるという定説があるように思えます。
それゆえ円形脱毛症に罹患した方々は日々のストレスが円形脱毛症を招いたと
結びつけて考えやすい構図があるようです。
実際に強いストレスにより発症される方も大勢居られますが、
すべてのストレスが円形脱毛症に結びつくわけではありません。
原因とされるストレスと今まで感じてきたストレスとの性質の違いや、
長期にわたるストレス、単発的なストレス、ストレスの強弱など明確な線引きをしにくく、
また原因となるストレスが解消した場合に症状の寛解が起こるのかどうかも
明確にいう事ができないのが実情です。
東洋医学的にストレスによる発症である場合、
内熱(ないねつ)や肝鬱(かんうつ)と呼ばれる証(しょう:東洋医学上の見立て)が
立つことが多いです。
原因(2)首や背中のコリ
現代はいたるところでパソコンを使用する機会が大変多い状況です。
また携帯電話などの使用による眼精疲労を覚える機会も多く、
それに伴い首肩の凝りを訴える方々が急増しています。
筆者の鍼灸院に円形脱毛症の相談で来院される方も首肩の凝りや痛みを感じているが大変多い状況です。
首肩の凝りは頭皮を管理する神経や血管の走行を障害している場合も多く頭皮環境、
曳いては円形脱毛症の発症に関与する場合もあると考えています。
東洋医学的には首肩の凝りの種類や性質にもよりますが頭皮の状況と無関係ではありません。
後述する円形脱毛症のかたの既往症の内容とも関係します。
原因(3)引っ越し
引っ越しを契機に円形脱毛症が始まったと訴える方が多いのも事実です。
少し意外な気もしますが引っ越しにかかわる負担や新しい環境など、
前述のストレスに多少関係する事柄かもしれません。
(2)あおい堂鍼灸院が考える
円形脱毛症発症のきっかけとなり得るもの(順不同)
これは円形脱毛症治療に来院された方々から伺った話の中で筆者が特に注目した出来事です。
罹患者ご自身は原因と思われていることは少ないようですが、
以下の事柄の起きた時期と発症時期との相関関係があるように思えた事を挙げてみます。
原因可能性(1)
長引く(1か月以上)風邪
円形脱毛症が始まった、
あるいは幾つかの円形脱毛症はあったが風邪が長引いた後に症状が
一気に悪化したと訴える方々が案外多くいらっしゃいます。
すべての風邪が悪化につながるわけではありません。
また風邪といってもインフルエンザや一般的な風邪の違いや、
症状の中でも咳や熱、鼻水といった共通事項があるわけではありません。
ただ、風邪の症状が治まるまでに一か月以上費やしたような場合の直後から
抜け毛が増える事が多いように思えます。
円形脱毛症の特徴として免疫が髪の毛を攻撃する事から考えると、
ウイルスや細菌と戦っている最中に
免疫システムに炎症を引き起こす何かしらの変化が起きたと考えられます。
東洋医学的に解釈では、東洋医学上の邪気(この場合風または寒)が
気血の流れを阻害したためと考えます。
原因可能性(2)
肩関節周囲炎(五十肩・四十肩など)
円形脱毛症が発症する数か月以上前から肩の不調が始まる方も、
発症してから肩に不調が生じる方も多く見受けられます。
これは肩にかかる痛みのため首肩の運動が抑制される事や
それに乗じて発生する筋肉疲労が頭皮に影響を及ぼしていると考えます。
東洋医学的には身体上方の気のバランスの崩れや
肝(かん)腎(じん)脾(ひ)等の経脈が大きく関わっている事が多いです。
原因可能性(3)
ピ ア ス
円形脱毛症が始まった、
あるいは症状が急に悪化した直前にピアスを開けている方も時折見受けられます。
これも全ての方が関係するわけではありません。
東洋医学的な解釈では耳は腎(じん:少陰腎経という腎臓に関係の深い気の流れ)に関係します。
その腎に穴を開けた為腎が強く影響を及ぼす髪の毛に不調が起きたと考えられます。
他には身体上部の1部に穴を開けた事で気のバランスが崩れ頭部に失調が起きたとも考えられます。
原因可能性(4)
虫 歯 や 抜 歯
時々訴える方を見受けられる程度であり全ての抜歯が関係するわけではありません。
相談に来られる方の中では特に親知らずを抜歯した後に
円形脱毛症の悪化を訴える方々が見られることです。
抜歯後の痛みや歯科治療の回復経過状況などにはまだあまり共通事項が見い出せていません。
これも前述のピアスと同じく身体上部の気のバランスの崩れから起こり得るものと考えています。
ただ歯科治療はとても重要大切であり、
治療せずに放置する事も気のバランスを崩す結果を招きます。
原因可能性(5)
痔(ぢ)
痔の症状と円形脱毛症の症状の程度が比例している方々を見受ける事があります。
東洋医学的には肛門に関係する経脈(けいみゃく:気の流れ道)と
頭部を管理する経脈は同一のものです。
痔を引き起こす背後には当然飲食の影響も強くありますが
東洋医学上の湿(しつ)・熱(ねつ)などの
邪気(じゃき:体に悪い影響を及ぼす気)が関わっています。
原因可能性(6)
飛 行 機
旅行や出張などで飛行機に乗ってから
症状の悪化が生じたと訴える方々も少数ですが見受けられる事があります。
気温・湿度・気圧やまたは放射線など明確な原因は不明ですが、
機上の環境が髪の毛や頭皮に影響を及ぼす可能性を考えています。
航空会社から公表されている機内の環境は気温22~26度、
湿度は長時間飛行で20%以下、気圧は0.7~0.8気圧となっています(航空会社HPより)。
このデータから東洋医学的な解釈を加えるならば
邪気の一種である寒(かん:寒さ)または燥(そう:乾燥)が頭皮に影響を与える可能性を考えています。
そして機内の気圧が及ぼす影響について考える際の参考として、
鍼灸治療での高山病治療を取り上げてみたいと思います。
鍼灸では高山病に合谷(ごうこく)という経穴(けいけつ:ツボの事)に鍼をして治す治療法があります。
合谷の作用はいろいろありますが
その中でもこの高山病の場合「理気(りき:気をめぐらす事)」が働くとされています。
気圧が低いという事は高山病と同じように考えて
空気が薄い事から気虚(ききょ:気が少ない事)になり易く気が巡りにくくなる可能性が考えられます。
よって飛行機搭乗後の症状悪化は気虚が大きな影響を及ぼすのではないかと推察しますが、
明確な定義は出来ていません。
原因可能性(7)
ア イ ス ク リ ー ム 類
季節に関わらず市販のアイスクリーム類を多食される方に
円形脱毛症の悪化が見受けられる事が多くあります。
アイスクリームの種類は一般的なアイスクリームをはじめ、
かき氷やシャーベットなども含まれます。
推測ではありますが、糖分や冷感が身体に何かしらの影響を及ぼしていると考えられます。
東洋医学的にアイスクリーム類を考えた場合、
甘さは湿(しつ)冷たさは寒(かん)が
消化器官を司る太陰脾経(たいいんひけい)や陽明胃経(ようめいいけい)に
悪い影響を及ぼしていると考えます。
また甘いものの多食は血を濁らせて
東洋医学上の悪血(オケツ:血の循環から外れた古くなった悪い血)を
発生させる源となります。
原因可能性(8)
魚 の 目 、 タ コ 、 巻 き 爪
あおい堂鍼灸院に円形脱毛症の治療を受けに来られる方の中で
上記の魚の目・タコ・巻き爪を患っている方がいらっしゃいます。
殆どのものは関係ない事が多いのですが、
数年以上同じ場所にあるような場合や円形脱毛症発症よりも古くから患っている場合、
または魚の目・タコ・巻き爪がその方の脱毛症のある場所と
経絡上関係のある部分に存在する場合に円形脱毛症発症と関係があると考えています。
実際に筆者が鍼灸治療を行う上で魚の目・タコ・巻き爪の治療をして
円形脱毛症の改善が見られたケースが何例かありました。
円形脱毛症は主に頭に発症するものですが手足の治療で改善するケースもある事は
東洋医学的な見地ではあまり珍しい事ではありません。
東洋医学では疾患はあくまでも気の乱れが引き起こすものであり、
経絡上相関する部分の変異は証立て(東洋医学の診断技術)や治療点として重要な意味を持ちます。
アトピーと円形脱毛症
あおい堂鍼灸院に円形脱毛症の鍼灸治療に来る方のなかで
アトピー性皮膚炎を同時に患っている方はとても多いです。
その方々から伺うお話として伺う事に、
今までアトピー性皮膚炎が改善したら円形脱毛症が悪化し、
逆に円形脱毛症が改善したらアトピー性皮膚炎が悪化したというものです。
この現象はおそらく西洋医学的な血液検査の結果などには表れず
病院等の医療現場では関連性が無いと考えられている事柄だと思います。
ただ実際にそのような状態になったと言われる方々がいらっしゃるのも事実です。
これを東洋医学的に解釈しますと「熱」の所在の変化であると
あおい堂鍼灸院では考えています。
まずアトピー性皮膚炎について考察してみたいと思います。
アトピー性皮膚炎の症状としては第一に皮膚の痒み、掻いた後の肌荒れです。
これを東洋医学的に分かりやすく説明するために時系列に列記してみます。
※アトピーの発症過程(あおい堂鍼灸院説)
身体の中の陰陽(気血)のバランスが崩れ、相対的に気(陽)が血(陰)に勝る状態となります。
この気は多くなると熱と成り痒みとして感じるように成ります。
熱とは気が余分に有り余った状態と考えておいてください。
身体がその熱を皮膚の毛穴から排出しようと熱が皮膚に集まってくるのですが、
その前段階として様々な原因により身体の毛穴は「風」と呼ばれる邪気に覆われ
毛穴が塞がれてしまっています。
そのため熱を排出できません。
そうして皮膚に排出できない熱が過剰に集まり、更に強い痒みとして認識します。
そして掻く事により掻いた場所に他の気(衛気:えき)が集まり
更に熱が高まり痒みを覚えるという悪循環があります。
掻くと皮膚が破れ皮下にあった浸出液(水や血漿成分あるいはリンパ液と言われている)が出てきますが、
この液は身体を冷ます為に不足している陰(血)の代用であるとも考えられます。
肌の一番外側の表面は熱が存在し、
そのすぐ下には熱を冷ます液がある事から皮膚の下に余分な熱は存在しないと考えます。
つまりアトピー性皮膚炎の特徴としては
本来体外に排出されるはずの熱が皮膚表面(そうり)に集中して存在する事とします。
では上記の発症過程を踏まえた上で円形脱毛症を東洋医学上の熱という観点から観察してみます。
円形脱毛症が悪化し、髪の毛が抜け落ちる(切れる)時、
円形脱毛症考上の「抜け期」で記載したような髪の根元が赤茶けて来る事があります。
この現象を考える際に参考として『和漢三才図絵』という東洋医学の医学書の記載を挙げたいと思います。
この書物の中にある髪の毛に関する記載は
『前略……各其の経気血盛んなれば則ち美しく、而して長く、気多くして血少なしは則美しく而して短し。
気少なく血多ければ則ち少にして悪し。気血倶に少なければ則其の処に生えず、気血倶に熱すれば則黄く、
而して赤し。気血倶に衰えれば則ち白く、而して落つ。』とあります。
簡単な言い方をすると「気血共に豊かであれば髪の毛は美しく長く成長し、
気が多くて血が少なければ美しいが伸びにくい。
気が少なく血が多ければ髪の毛が少なくて質も悪い。
気血に熱があると黄色かったり赤かったりする。
気血が途絶えていれば白髪になってそのうち抜けてしまう」とあります。
つまりこの書物によれば「抜け期」の髪の根元の赤茶ける現象は
この記載から気と血両方に熱が存在した為という事が分かります。
この事から円形脱毛症の悪化している時期には気が流れる皮膚表面と
皮膚の下にある血の位置に熱が存在する事となります。
アトピー性皮膚炎が改善し、
痒みが少なくなったとしたら少なくとも皮膚表面の熱の余りが解消されたと考えても良いと思います。
ただし、その際に円形脱毛症が悪化した場合は
アトピー性皮膚炎として症状を引き起こしていた熱が皮膚の下方の血に移動したと考えられます。
逆に円形脱毛症が改善してきたとしたら血にある熱は解消したと考えて良いと思われます。
その際にアトピー性皮膚炎が悪化した場合は
円形脱毛症を引き起こしていた熱が血から皮膚表面の浅い場所に移動したと考えられます。
よって円形脱毛症とアトピー性皮膚炎の症状が互い違いする現象を捉える場合、
熱が皮膚表面か1段深い場所の血にあるのかの違いでどちらの症状が出るかという事なのです。
円形脱毛症とアトピー性皮膚炎の両方を患っている場合、
治療としてはやはり熱を解消させる事が優先されます。
ただし上記したように単純にその場所の熱を払うだけでは対処療法でしかありません。
問題はその余分な熱の発生源です。
発生源がある限りいつでも症状の再発はあり得ます。
その発生源を探し出すのが後述する「弁証」と言われる鍼灸治療独自の診断方法です。
円形脱毛症もアトピー性皮膚炎も罹患者の数だけ様々なケースがあるため
一括りにまとめるのは困難ですが、熱が媒介するケースでは二便(大便・尿)の管理がとても大切です。
なぜなら熱の排出として最も適しているのが便だからなのです。
これは西洋医学的にも免疫の異常は腸内環境が関与すると言われている事と共通するかもしれません。
トリガーポイントと円形脱毛症の関連性
☆トリガーポイントとは☆
西洋医学の理論です。
筋肉(正確には筋・筋膜)の疲労などから筋肉が損傷します。
そして損傷した筋肉固有の部位に
関連痛と呼ばれる痛み等が起きる現象を指します。
痛みや様々な現象は損傷した筋肉固有の部位のみならず
損傷した筋肉とは関係の無いような遠隔部にも強く感じられる事があります。
発生機序としては損傷した筋細胞からカルシウムイオンが放出され、
筋肉が自動的に収縮を持続させます。
その収縮により硬くなった筋肉が血管を圧迫します。
そして血液からの酸素等の供給を受けにくくなり
更に筋細胞が損傷する悪循環を引き起こし慢性的な痛みへ繋がってゆく現象です。
◎円形脱毛症との関連◎
あおい堂鍼灸院へ来院される方の身体的特徴もある程度のパターンがあります。
それは筋肉の凝りの場所です。
もともと身体の中で凝りやすい場所は多々ありますが、
円形脱毛症脱毛部とその方の凝りの場所と相関関係のある場合があるように思える時があります。
脱毛部が発生する場所は大きくパターン分け出来ます。
そのパターンと凝りの部位との一致があった場合、
あおい堂鍼灸院では重要な治療ポイントとして認識しています。
また凝りの部位も後述する弁証において
その方の気の偏りを治す経穴(ツボ)と一致する場合が多い事も併記しておきたいと思います。
本来トリガーポイントと経穴は全く異なる概念ですが
両者とも同じ身体上に存在する事から重なり合う現象も起こり得ると考えます。
そして現在トリガーポイントと円形脱毛症の関連性は明確に定義されておりません。
したがってトリガーポイントとの関連性はあおい堂鍼灸院独自の見解です。
ただ、トリガーポイントには立筋反射と呼ばれる自律神経の障害や
皮膚分節性脱毛などを引き起こすといった
円形脱毛症との結びつきを感じさせる手がかりも有るとあおい堂鍼灸院では考えています。
一方で凝り固まった筋肉をほぐす方法は様々ですが
筋肉に対して直接アプローチできる鍼治療はとても有意義なものであると考えています。
円形脱毛症のヘアケア
円形脱毛症罹患の有無に問わず頭皮を清潔に保つ事こそが
髪の毛の健康に役立つとされている風潮がありますが、
あおい堂鍼灸院はこの考え方に賛成していません。
現在頭皮を清潔に保つ事は
頭皮の皮脂をよく落とす事と言い換える事ができるくらいに
洗浄力の強い様々なシャンプー等が販売されています。
では悪役とされてしまっている皮脂について少し考察してみたいと思います。
まずは皮脂の役割とは何なのでしょうか。
皮脂は本来頭皮と毛髪を乾燥などの刺激から
頭皮を保護する保護膜の役割を担っていると考えています。
その保護膜を洗い流してしまうと身体としては保護されなくなる為、
急きょ新しい保護膜になる皮脂を分泌するように働き始めます。
これは筆者の手元に明確なデータがあるわけではないのですが
洗い落としては分泌し、分泌しては洗い落としを繰り返していくうちに
皮脂腺の機能が亢進して皮脂の分泌が徐々に増えてくる可能性を考えています。
将来的に皮脂の分泌が極端に増えた場合は
脂漏性脱毛などの新たな症状を作り出していく事に繋がりかねません。
また、皮脂が分泌される際に働く神経は交感神経です。
交感神経に指令が下ると皮下にある皮脂腺を刺激して皮脂が分泌されます。
その際に交感神経は周囲の毛細血管にも刺激を与え、
血管壁を収縮させる性質があります。
血管壁が収縮は血管の内径が狭まる事であり血流の低下と言い換えられます。
つまり頭皮を洗浄すればするほど将来的に皮脂の分泌が多くなる可能性が高まり、
尚且つ頭皮の血流も同時に悪化する事になります。
結果としては現代でいうところの頭皮の清潔さは全く必要性を欠く概念であると言えます。
では、皮脂は本当に頭皮に対して悪影響を及ぼさないか考察してみましょう。
現在一般に言われていることに皮脂の中には男性ホルモンであり
髪の毛の成長を阻害する5αDHTが含まれており、
毛根の成長に悪影響を及ぼすとされています。
そこでこの5αDHTを考える際に参考になるものが
男性型脱毛症の治療薬であるフィナステリド(商品名プロペシア)です。
{本来男性型脱毛症と円形脱毛症は全く別の疾患ですが、
ここでは皮脂が髪の毛に与える影響を考える際の参考に取り上げてみたいと思います}
フィナステリドは経口薬で本来男性の前立腺治療に使われるものでした。
経口薬なので口から飲み、
体内に吸収されたのち男性ホルモン(テストステロン)が
5αDHTに変様する化学変化を抑制する働きをします(詳細はwikipedia等を参照の事)。
結果として体内の5αDHTが減少し、
必然的に血流などを介して毛根に到達する5αDHTを減少させる事で
男性型脱毛症を改善させます。
皮脂も血液から作られますが
皮脂を作る際の材料となる血液の中の男性ホルモンを減少させることによって
男性ホルモン含有の少ない皮脂を生成すると考えます。
5αDHTの少ない、いわば安全性の高い皮脂の分泌により
発毛や育毛を促進させるのがフィナステリドの効果であると筆者は解釈しています。
フィナステリドの目指す目標は血液中の男性ホルモン抑制であります。
したがって一度体外に分泌された皮脂による
毛根に対しての悪影響を防止する事ではないと考えます。
もし皮脂に含まれる5αDHTを抑制する事が重要であれば、
男性型脱毛症の治療薬としてのフィナステリドは塗り薬の状態が
最も目的に適した形状ではないかと考えます。
それが経口薬であるという事実は頭皮に分泌された皮脂は
ホルモンの作用として髪の毛の成長に影響を及ぼさない、
またはホルモンの作用が弱い事を示していると言えるのではないでしょうか。
では皮脂に関する事柄で他に言われている事では
皮脂が毛穴を塞ぎ皮膚呼吸出来なくなるといったものもあります。
この事について考えてみる際に実際に皮膚呼吸という生理現象が存在するのか、
また毛根は皮膚呼吸しているのかどうかを確かめる必要があります。
インターネットなどで皮膚呼吸を検索をしてみると検索結果としてすぐに出てきますが
皮膚呼吸というものは現在あまり根拠のない説であるようです。
もし本当に毛根が皮膚呼吸を必要としているのであれば
洗髪回数が少なく頭皮が汚れている人ほど薄毛である筈なのですが
世の中を見渡すとそうとは言えません。
この事実から毛根はあくまでも血液から毛細血管を通して酸素や栄養を供給しており、
皮膚上の環境はさほど影響を与えないと考えられます。
また円形脱毛症の脱毛部をマイクロスコープで観察していくと
産毛の生える場所には角栓様物質(かくせんようぶっしつ)が
見受けられる事が多くあります。
角栓様物質とは正式な学術名称ではないようですが、
世間一般に毛穴の詰まりと呼ばれているものです。
頭皮の垢(角質)や皮脂が固まって
毛穴を塞ぐ(栓の様子)もの(物質)という意味合いであると思われます。
現在の一般的な風潮ではこの角栓様物質こそが
毛穴を塞いで皮膚呼吸を妨げる髪の毛トラブルの原因として積極的に除去します。
ただ前述のように産毛の生える場所に角栓様物質が見受けられる事から
あおい堂鍼灸院では角栓様物質に怪我が治癒する際に形成される
カサブタと同様な作用があるのではないかと想像しています。
その検証の為に参考として角栓様物質の成分はオレイン酸であるという事があります。
オレイン酸は皮脂の成分として含有されていますが、
それ以外にもオレイン酸の供給源があります。
それは皮膚常在菌と呼ばれる人間の皮膚上に生息する
無数の細菌が作り出しているものです。
皮膚常在菌の中には表皮ブドウ球菌という一般的に善玉菌と呼ばれる細菌があります。
この表皮ブドウ球菌は皮脂を分解してオレイン酸を作り出す事で
肌を弱酸性の良い状態に保つ為に必要な細菌です。
産毛の生えてくる状態の良い脱毛部は皮膚常在菌の働きが活発であり、
オレイン酸の産生が多いため角栓様物質が形成されるとも考えられます。
つまり角栓様物質は治癒の過程の状態であり、
皮膚呼吸とは全く関係の無い話であると筆者は考えています。
よって髪の毛に為に頭皮の皮脂を積極的に洗い流す必要性はあまり無いと考えています。
≪まとめ≫
筆者の考える理想のヘアケアとは洗浄力の弱いシャンプーで優しく洗う事。
もし洗髪を必要以上に行えば頭皮に生息する皮膚常在菌が
除去され過ぎてしまう可能性があります。
このホームページ上の『生え期』でも書いてありますが
角栓様物質が見られるところに産毛が生えるケースは
髪の毛が作られる際に皮膚常在菌の関与がある可能性として考えられます。
皮膚全般に視点を移せば手にできる主婦湿疹などで言えます。
主婦湿疹は家事などで度重なる手洗いを行う事から
皮膚の保護機能である皮脂が奪われ皮膚常在菌も除去されることで発症します。
乾燥は思いもよらぬ皮膚トラブルを引き起こす原因になりかねません。
個別的には脂性の方も乾燥肌の方もそれぞれいらっしゃるので一概には言えませんが、
社会生活を営む上で周囲の方に
不快感を与えない程度の洗髪頻度(凡そ1日~3日に1度程度)が
適切なのではないかと考えています。
また理美容室でのパーマやヘアダイについては
筆者の考え方としてはパーマは髪の毛にかかる負担が大きく思えるため賛成できません。
ヘアダイは色調がとても明るくなるものを除いてはさほど影響の無いように思えます。
医師により見解は異なると思われますが、
あおい堂鍼灸院に相談に来られる方々のお話では
その方の主治医からヘアダイは禁止されていないという話を聞くことも多くあります。
円形脱毛症の人の既往症
以下に挙げる病名はそれぞれが独自の病気であり、
同時に葵堂鍼灸院に来院された円形脱毛症罹患者の既往症で多かったものです
あおい堂鍼灸院では罹患者が今までどのような病気を患ってきたか、
または罹っているかでその方の体質を割り出す参考にし、
その方独自の鍼灸による円形脱毛症治療法考案の一助にしています。
◎1 ぜんそく
小児の頃に発症する小児ぜんそくや成人した後も引き続きぜんそくを患っている方が
当院を訪れる方に多く見受けられます。
現在ぜんそくは様々な説のある中、IgE抗体の不全症といわれることがあります。
円形脱毛症を患う人の中にはこのIgE抗体の数値が非常に高い方が多く見受けられる事からも
両者の症状の発症に強い関連性が伺えます。
西洋医学的には円形脱毛症もぜんそくも病院での投薬では
ステロイドを用いられる事も多く見受けられます。
一方で東洋医学的な関連はどうかというと、
両者共に肺・脾(肺・消化器の経脈)肝による失調、
または風寒・湿熱による失調の場合が多く見受けられます。
◎2 アトピー性皮膚炎
子供の頃アトピー性皮膚炎だった、
または現在もアトピー性皮膚炎を患っているという方は多く見受けられます。
これも前述のぜんそくと同様、免疫のIgE抗体が深く関わっているとされる病気です。
病院での治療法は両者ともステロイドが指示される事も多く見受けられます。
東洋医学的には肺・脾・肝と血の失調、
そして風熱・風寒による失調の場合が多く見受けられます。
◎3 花粉症・アレルギー性鼻炎
季節性の花粉症の他、季節を問わず鼻水が止まらない、
鼻が詰まるというアレルギー性鼻炎の方も多く見受けられます。
この両者の症状もまたIgE抗体が大きく関わる事、
また重度の花粉症ではぜんそくに似た症状を引き起こす事などもあります。
病院での治療は症状の強い場合など、ステロイドを指示されることもあります。
花粉症・アレルギー性鼻炎を東洋医学的に解釈すると、
上昇する種類の気、または身体の中の水分量の問題と捉える事ができます。
その東洋医学的な説明をいたします。
自然界で水は高い場所から低い場所へと流れて行く法則のようなものがあります。
それは自然の一部である人間にも適用されます。
すなわち人体の水も上方である口から取り入れ尿として下方に流れていきます。
ところがこの症状では一度下った水が再び上方から溢れてきます。
この現象は水を上方に突き上げる種類の気が過多であると捉えられる一方、
身体の中に水が満杯で溢れている状態となります。
東洋医学的な原因としては様々な理論があるのですが
肝・脾・肺の失調、環境的な春という季節の気に肝が同調し
影響を受けてしまっている状態である場合が多く見受けられます。
◎4 五十肩・四十肩など首肩背中の異常
円形脱毛症に罹患するずっと以前から、
または罹患する時期の前後から肩の痛みや強いコリを感じておられる方も
非常に多く見受けられます。
運動時に痛みを感じる方、運動していなくても痛みを感じる方、
左右どちらかに首を回すと痛みを感じられる方など様々です。
この症状を東洋医学的には
『不通即痛(つうじざればすなわちいたむ)』であるといえます。
この言葉の意味は全身に流れている気が
何かの原因によって流れが遮られる「痛み」として感じるという東洋医学の基本概念です。
円形脱毛症と関連付けて考える場合、
痛む場所と脱毛部との関連性が東洋医学的だけでなく
西洋医学の理論的にも見受けられる事があります。
東洋医学的には少陽経(しょうようけい)、陽明経(ようめいけい)の失調、
または風寒が関与している場合が多いようです。
◎5 痔(ぢ)
痔も世間では罹患している方のとても多い疾患ですので、
確率的にも痔と円形脱毛症を同時に患う事は珍しくないかもしれません。
ですが頭部の疾患である円形脱毛症と下半身の失調である痔は
あおい堂鍼灸院において関連性のある疾患として取り扱っています。
どちらも発症における時期的な前後はあるようですが、
互いの症状の進捗具合に相関関係があるように思えるケースがあります。
東洋医学的には飲食、肝・腎・脾及び太陽膀胱経の失調、
または湿熱が関与している事が多いようです。
◎6 不眠症
円形脱毛症と同時に不眠を訴えられる方もとても多いです。
単に円形脱毛症の不安によるものもありますが、
あおい堂鍼灸院では主に血の失調として捉えています。
寝つきの良くないもの、夜中に目覚めてしまうもの、
夢をよく見る為深い眠りに入れないものも不眠症とは言えないかもしれませんが、
治療の際に考慮します。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
以上があおい堂鍼灸院に来院される方の中で既往歴として多かったものです。
もちろん他の病気は全くない方も、
さらにはもっと他の病気を患っている方もいらっしゃいます。
ここで様々な病名を挙げたのは前述したとおり
円形脱毛症に罹る方の体質をある程度パターン化して
治療法(鍼灸)を編み出すためのものです。
これらの病気が治らなければ円形脱毛症が治癒しないであるとか、
発症しやすいというものではありません。
実際の鍼灸治療と養生
実際の鍼灸治療と養生について
東洋医学では身体には目に見えない「気」が
川の流れのように絶え間なく流れ、循環しているとされます。
その流れに偏りや滞りが生じると身体が病と呼ばれる状態になります。
逆説的には病があるならば必ず気の偏りがどこかに生じている事になります。
円形脱毛症は頭皮や髪の毛にとって通常の状態ではありません。
即ち気の流れに不具合がある事になります。
鍼灸治療では後述する弁証(べんしょう)と呼ばれる作業を通じて
気の不具合を見つけ出します。
そしてその不具合を解消する最も適切なツボに鍼や灸を施術する事で治療を行います。
まずはその道具である「鍼(はり)」についての説明から。
「鍼(はり)」
鍼は直径0.14mm~の太さの金属です。
あおい堂鍼灸院で使用する材質はステンレスです。
この鍼をツボやその他の反応点や脱毛部に施します。
鍼は打ってから直ぐに抜く場合も、
10分~20分程度そのままにしておくものもあり、
身体の状態に応じて使い分けます。
多くの方が痛みはどの程度かと気になさいます。
異物である鍼を身体に打つわけですから完全無痛で無感覚とは言えないかもしれません。
打つ時に多少チクチクとする感覚があるかもしれませんが、
実際のところそれ程強い痛みは感じられないと思います。
またチクチクという感覚の他に「重い」や「温かい」などといった
得気(とっき)と呼ばれる感覚が生じる場合があります。
得気は必ずあるわけではありませんが、
鍼がよく効いている感覚と思っていただければよいと思います。
「灸(きゅう)」
植物の「ヨモギ」の絨毛と呼ばれる細い繊維を精製したものを
「もぐさ(艾)」と呼びます」。
そしてそのもぐさを身体の上で燃焼させる事が「灸」です。
もぐさの火が肌に直接触れるので施術される方には感覚が生じます。
ただし観念的ですが「熱い」というよりも「チクッ」という感覚に近いと思われます。
それは燃焼時間が圧倒的に短く(直ぐに燃え尽きてしまう)、
感覚を覚える時には既にもぐさの火が消えている為です。
この灸をツボや反応点、または脱毛部にも施します。
脱毛部に施灸する場合、毛穴が火傷してしまい、
毛根が破壊される心配をされる方もいますが、
あおい堂鍼灸院で行う灸は皮膚に瘢痕を残すようなお灸は
特別な場合を除いて致して居りません。
施灸が脱毛症治療に功を奏しているのは従来の経験から理解できていましたが、
それを裏付ける画像を撮影する事が出来たので紹介いたします。
下の画像は脱毛症の治療で施灸した8日後の頭皮画像です
(この画像のように見える事は大変稀です)。
上記画像の中央に位置する場所に施灸した為、灸の火で毛先が焼け、切れています。
髪に刺さった物は灸で軽い火傷が生じ皮膚の皮が剥がれたものです。
また毛先から根元までの長さを画像の大きさから推測すると
施灸してから撮影時までの8日間に3mm程度髪の毛が成長している事が伺えます。
また毛穴付近には灸で生じた火傷の痕は残っていません。
また髪の毛の成長速度が平均1日当たり0.3mmであるとした場合、
0.3mm×8日間で2.4mmになります。
画像判断は大まかですが3mm伸びているとしたら
平均を上回る髪の毛の成長が施灸によって成された事になります。
ただし、画像の測定が曖昧である事や
それぞれの毛根の成長速度が異なる可能性もあるので
根拠が乏しいかもしれません。
ですが少なくとも施灸が毛髪の成長を妨げる要因には
成らない事は分かりますし、
上手くいけば髪の毛の成長を促進できる可能性も
あるのではないかと考えています。
この画像から分かる事として……
①灸をしても毛根は破壊されず髪の毛は成長する事
②毛先が焼け切れても髪の毛の成長には影響がない事
③灸は髪の毛の成長を促進させる可能性がある事
この3点から最低限灸は円形脱毛症に悪影響を及ぼす事は
無いとしたいと思います。
では上記のような鍼や灸を用いた鍼灸治療を
どのように進めるかをこれから紹介いたします。
まずは現状の体質や前述した気の偏りを割り出す為の
弁証という作業に入ります。
≪弁証≫
鍼灸治療を行うに当たってまず弁証(べんしょう)と呼ばれる作業をします。
弁証とは罹患者の身体の状態を東洋医学的に見分する事です。
円形脱毛症に効くとされるツボは確定していない為、
弁証は必ず必要な作業になります。
世間で言われる効果のあるツボとは
あくまでも比較的よく治療に用いられる
ツボという範疇を超えるものではないのです。
一口に円形脱毛症と言っても様々な種類や傾向が存在し、
同時に原因も様々です。
東洋医学では身体を流れる気の偏りにより病気になるとされています。
この気の偏りを正すツボを正確に割り出さなければ
いくら鍼や灸を施しても病気は良くなりません。
あおい堂鍼灸院の弁証では罹患者の『脈』や『舌』や、
発生した脱毛部の部位や形状、全身のツボの状態、
今までに罹ったことのある病気等を参考に円形脱毛症を独自に分類します。
弁証を経て初めて実際の治療行為へとコマを進めます。
≪鍼灸施術:治療≫
弁証によって導き出されたツボへ鍼や灸をして身体の気の偏りを正します。
気の偏りが正されたかどうかは弁証時に行った脈診や舌の状態などと
施術後の状態を比べて判断します。
身体の状態に合った治療が行われた場合は脈や舌の状態が改善しています。
この状態の確認作業を繰り返してゆく事で
その患者様にとって有効な治療が確立されていきます。
1回の治療で施術するツボの数は状態と治療法によって変わりますが
極端な場合は1か所~10か所程度、非常に多くても15か所程度です。
(ただし一つのツボに対しての鍼の本数は勘定に入っていません)
10か所はまだしも1か所と聞くと大変少なく
心もとないように思える方も多いと思います。
ですがツボの個性を最大限に引き出し
症状に対して効果的に治療をする為に少数のツボに限定する事は
重要であると葵堂鍼灸院は考えております。
その理由として例を挙げてみます。
例えばAというツボは上半身の調整に役立ち、
Bというツボは下半身の調整に役立つとします。
その両方に鍼灸を施術したとすると上半身と下半身両方の調整ができて
一石二鳥と思われるかもしれません。
ですが最初に述べたように東洋医学での病は気の偏りが原因です。
状態によっては上に行き過ぎている気を下げる事、
または下がりすぎている気を上げる事が
病を治す事であり鍼灸治療の目的に成ります。
治療として上半身の気を動かして調整する事が必要な場合、
AとBに鍼灸を施術した時に気はどのように動くのでしょうか。
上半身にも下半身にも気が動いて結局何処に気が落ち着く結果となるのかを
考える必要が生じると考えます。
勿論相殺されて全く効果がないという事にはならないかもしれません。
ですが上半身の気を下げる事が目的の治療の場合、
ツボをAだけにしておけばBという他の影響がない分、
上半身に対してより直接的な強い影響を与える治療が出来たと思われます。
このような事からあおい堂鍼灸院では
弁証という作業を確り行う事で病の性格や所在を明確にし、
少数のツボによるダイレクトで効果的な治療を心がけています。
≪養生≫
鍼灸治療を受けている事が病(特に慢性病)から
解放される免状となる事はありません。
何が言いたいかと申しますと治療は最後の一押しであり、
それ以上でもそれ以下でもないのです。
最も大切で重要なのは患者様本人の普段の生活中での自助努力です。
その中には当然「治りたい」「治したい」という
気持ちを持っていただく事も入りますが、
最も大切な事は日常生活での節度です。
具体的には規則正しい生活、刺激物を控えめにした品目の多い
バランスの良い食事、感情的になり過ぎない穏やかな心境を心がける、
適度な運動ストレッチ等々です。
これこそ言うは易し行うは難しですが、養生の王道であると考えます。
逆にそれらを実行しているのになかなか治らないという方は
それこそ鍼灸治療という最後の一押しが必要な方なのかも知れません。
またはご自身の生活の中で何が影響しているのか
分からない方も多いと思います。
その場合は東洋医学的な弁証によって身体の欲している事を
探ってみるのも良い事だと思います。
養生によって体質を変えたい場合は
良い方向に行くのも悪い方向に行ってしまうのも
継続と反復が全てのカギです。
勉強でも筋トレでも継続反復して初めて変化が起きてきますが、
これは体質の変化であり、一つの体質改善であると言えます。
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